ジャンヌ・ダルク 超異端の聖女 (講談社現代新書)



ジャンヌ・ダルク 超異端の聖女 (講談社現代新書)
ジャンヌ・ダルク 超異端の聖女 (講談社現代新書)

ジャンル:歴史,日本史,西洋史,世界史
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ジル・ド・レが・・・

確かに、この本に「ジャンヌ・ダルク」と銘打つのはあまりふさわしくないと思います。ジャンヌを真に扱っているのは4章と5章だけだからです。しかし、著者は最初に「地と柄」という概念を持ちだしています。ですから、まずジャンヌの生きた時代を大海原のように扱って、最後に孤島のようにジャンヌをポコッと浮き上がらせるのがねらいだったのでしょう。そして、地と柄はいつでも交代する関係にあるということをわれわれに教え込みます。正統なものが永遠に正統なのではなく、異端に転落することもある。そして、異端と正統を超越したパラ・エレジーなる存在もあるのだといっています。しかし、なんといっても私が一番びっくりしたのは、男の子を数百人も殺害したジル・ド・レとジャンヌが戦友だったとは! ジル・ド・レの裁判にあたった司教は、彼の自供を聴いて、そのあまりの酷さに後ろを向いてしまったくらいです。ジャンヌを失ったジル・ド・レは、心が狂乱するほどに、深く魂の奥に彼女を抱いていたのでしょうか。著者がいうように、彼にはジャンヌの喪失が、悪と性への深淵へ真っ逆さまに落ちていく契機となったのでしょうか。ジャンヌの超異端は中世のあらゆるものを巻き込むばかりではなく、この現在をも巻き込んで進んでいきます。 
タイトルに異議アリ

ジャンヌダルクと銘は打っているが、この本の基本的な内容は、
中世の女性の神秘性であり、
ジャンヌダルクはその代表例の一つとして程度の扱いしか受けていないように感じる。
また、ジャック・ル・ゴッフの提唱した超異端のコンセプトに
非常に心酔しているのだろうか、この本のいたるところでは
超異端について著者の考えや事例が延々と述べられている。

要するにこの本に書かれていることは、ジャンヌダルクではなく、
中性に存在した超異端の女性達の社会的立場や功績、人生などを
書き綴っているものである。
タイトルに、異議アリ。
女性史の一つの見方

この本は、ジャンヌ・ダルクの伝記というより、ジャンヌ・ダルク像の歴史と言った方がいいものです。中世の女性は、社会の底辺にいて虐げられた存在という印象強いが、それは現代の視点から一方的に見たもので、必ずしもそうでないと著者は言います。中世の女性は、社会の枠の外にある部分を担っており、無権利であるからこそ社会の拘束から自由であり、そんな存在の現代の物差しでは到底計れない部分を「超異端」であるとします。そしてその代表として、ジャンヌ・ダルクをあげるのです。彼女の示した奇跡や偉業は、決して例外なものではなく、他にもそんなことをやってのけた女性が少なくないことを実例を示してゆきます。時にお告げを聞き、奇跡を起こし、剣を振るう女性がおり、それが必ずしも、おかしいとされなかったヨーロッパ中世という社会はとても興味深く、それらを迷信、混沌という言葉で済ませてしまうのは、おかしいように感じました。合理主義や競争社会など、現代的視点、価値観では見落としてしまう女性の役割が指摘されており、歴史的に女性の果たして来たことを考えていく上で、参考になる一冊だと思います。
新書ではあるが入門書ではない

内容的に抽象的、難解(不親切)な部分が序盤に集中する。ただ、それをがまんして読み進んでいくと、途中から俄然面白くなってくる。ジャンヌ・ダルクの前後に存在した中世の歴史上の人物のエピソードや、中世の社会の常識、宗教観などについての考察などを交え、ジャンヌ・ダルクという現代の目から見れば相当に不可思議な存在が、当時としてはどのような存在だったのかということを明らかにしていく過程は、非常にスリリングだ。時として納得できない結論づけもあるが、例えばジャンヌの聞いた「神の声」などは、誰にも解けない謎であるし、人それぞれに仮説を立てたり、解釈したりする余地を残している事自体が魅力の一つであることを思えば気にならない。
神の声を聞いた救国の少女、魔女としての火刑、そしてフランスの守護聖女

 日本で最も有名なフランスの女性はマリー・アントワネットであり、ジャンヌ・ダルクはそれに次ぐと思われる。しかし、マリー・アントワネットはハプスブルク家から嫁した者であり、いわばよそ者である。フランス生まれのフランス人の筆頭はジャンヌ・ダルクであろう。そして、ジャンヌ・ダルクこそ、「フランス」と呼ばれる土地に住む人々に「フランス」という国家を意識させた最初の人物だった。

 ジャンヌ・ダルクは神の声を聞き、神の命令に従って王太子のシャルルを戴冠させ、男装してイギリス軍と戦っているところを捕らわれ、魔女として処刑された。しかし、死後に裁判は取り消され、20世紀に至ってフランスの守護聖女として「聖女伝」に名を連ねることとなった。本書では、ジャンヌ・ダルクの波乱に満ちた生涯を中心テーマとしてすえつつ、関連する幾つかの問題が検討されている。第一に、「神の声」とは何なのか。彼女だけが「神の声」を聞いたのかという問題である。何人かの女性が取り上げられている。第二は、中世における魔女裁判についてであり、「魔女」とされることにはどのような意味があるのか、なぜ「火刑」なのかが説明されている。第三は、なぜジャンヌ・ダルクが魔女とされなければならなかったのかの点である。これは、中世において女性が「男装」することにどんな意味があるのかという問題に関わる。第四は「聖女」についてであり、どのような人物が「聖女」として列伝されているのかの説明がある。

 本書のクライマックスは、裁判におけるジャンヌ・ダルクと審問官のやりとりである。彼女の最期の瞬間である。気高く純粋な少女の悲劇的な結末の意味は、今なお考慮するに値する重要な問題である。

 本書は、内容が十分に整理されておらず項目の立て方が乱暴である。また表現に配慮が足りず難解と感じる箇所分が少なからずある。そうした難点はあるが、総じて良書と評して差し支えないと思う。



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